株式会社ファブリカコミュニケーションズ
CULTURE

2023/06/22

【CDOインタビュー】ファブリカコミュニケーションズの生成AI利用の取り組み 〜WEBサービス連携・社内活用の裏側〜

  • 研究開発
  • AI
  • 事業推進
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ファブリカコミュニケーションズを代表するC向けのサービスの一つが、中古車検索サイト『車選びドットコム』。リアルタイムかつ最新の中古車はもちろん、中古車探しに役立つ情報を多数掲載し、2004年のサービス開始以来「欲しいクルマとの出会い」を提供し続けています。

そんな『車選びドットコム』では、2023年3月にいち早く対話型AI(ChatGPT)との連携機能もリリース。ユーザーがより使いやすく、スムーズにクルマ探しを行うための機能拡充に取り組んでいます。

このスピーディな開発の裏側にはどのような社内連携があったのか?また近年注目を集める技術を、今後どう活用していくのか?
今回は、ChatGPTをはじめとしたLarge Language Model(LLM/大規模言語モデル)関連技術の研究開発に携わる当社CDO・大西秀典さんに、リリースまでの裏側とこれからの展望について直撃しました。

CHAPTER

『車選びドットコム』へのチャット機能導入の背景

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▲IT戦略統括部 統括部長兼CDO 大西 秀典(おおにし ひでのり)
2010年入社。当社CDO(Chief Design Officer:最高デザイン責任者)として、各プロダクトの企画・開発・マーケティングなどを統括・推進。2023年6月に設立した子会社、Sparkle AI株式会社の取締役も担う。

——近年話題となり、ファブリカコミュニケーションズでも積極的に活用されているChatGPTですが、まずは機能連携に至った背景を教えてください。

2022年11月、OpenAIが自然言語処理のLLMをチャット向けにチューニングしたChatGPTがリリースされ、その精度に多くの人が驚きました。そして、ChatGPTをチャットボットとして活用することで、日本語のユーザーも実際に人間と対話しているかのような、柔軟なインタラクションを実現することができるのだと明らかになりました。

またChatGPTのAPIが公開され、比較的簡単に先進的なチャットボットを開発できるようにもなりました。これを活用し、情報検索サイトやECサイトでの「対話型の検索・購買体験」は今後も増えてくるはずです。

そんな中、当社でも新しいUXを追求する取り組みの一貫として、まずは「『車選びドットコム』とChatGPTとの連携機能」を実装することとなりました。

——「車選びドットコム」では、欲しいクルマの条件や用途・場面などをチャット形式で伝え、スムーズな中古車検索に繋げています。このアイデアは生成AI技術の革新に関わらず、元々あったものなのでしょうか?

はい、私たちが提供する『車選びドットコム』では、「自然文で検索したい」「まだ欲しいクルマが決まっていない人でも、クルマを検索できるようにしたい」というニーズが、実はたびたび企画として上がっていました。

しかしウェブサイトでは「検索エンジンからの流入を重視して、適切なページに素早く誘導する」という体験が重要視されています。

そのため「まだ欲しいクルマが決まっていない人」を対象としたサービスは、『車選びドットコム』のような検索サイトにおける問題解決の優先順位が低く、これまで積極的な実装には至っていなかったんです。

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車選びドットコムがChatGPTと連携!業界初の新機能で、最適なクルマ選びをサポート

——そんな中、ChatGPTをはじめとした生成AI活用の流れが活発になり、企画が形になったのですね。

そうですね。
ただ、ChatGPTは過去の情報を使って学習したLLMを使って文章を生成しているだけで、検索を行っているわけではありません。そのため中古車など、リアルタイムの在庫情報を反映しなければ意味が無いような情報は扱うことができません。

一方で、今後はChatGPTプラグインをはじめとした方法で、インターネットにその場で接続しリアルタイムの情報を検索&提供できるようになっていくことが分かっています。
OpenAIだけでなく他のプレイヤーも同じような機能を実装しますので、今後は『インターネットで検索して探す』という体験自体に変化が生じることでしょう。

この『検索体験自体が変化する』前提のもとでは、既存のユーザー流入構造に固執するよりも、早期にアプリケーションを作って運用し経験を積むことがより大切です。
その考えが、今回のスピーディーな開発に繋がった一因でもありましたね。

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——新しい技術を用いた機能開発において、困難だったことは?

OpenAIがChatGPTのAPIを公開しているため、チャットボットの部分を作るのはそれほど難しくありません。
むしろ大変なのは、サーバ側からのトリガーによって画面を更新するという、チャットインターフェースやバックエンドの開発、または不正利用を防止するためのセキュリティ対策の部分です。

当社では、プロダクト開発の全過程——企画、設計、インフラ構築、開発(プログラミング)——を自社で完結できる経験とノウハウがあるため、この基本的な開発力を生かすことができました。
今後も、既存の自然言語処理ではユーザニーズを満たすことが難しいとされてきた部分に対して生成AIを活用し、プロダクトのUXを改善したいと思います。

さらに、高度な自然言語処理能力を前提とした生成AIを用いることで、LLM以外のモデル(例えば画像生成など)も効果的に活用できるシチュエーションが出てくると考えています。
これらの組み合わせによって可能となる新たな価値を模索し、できるだけ多くの試みを行っていきたいと思っています。

社内での活用促進も実施

——ファブリカコミュニケーションズでは、プロダクトだけでなく社内でのChatGPT活用についても整備が進められていますよね。

生成AIの利用が広まることによって、人々の生活や働き方にどのような良い影響や悪い影響が出るのか、まだまだ未知数の部分が多いのが現状です。Googleのような大手テック企業さえも、この変化に慌てて対応している状況です。

また市場や技術のエコシステムにおいても再編成が求められており、全てのプレイヤーが新たな適応を迫られる状況にあります。

私たちの会社では「変化」を肯定的に受け入れるミッションを掲げています。
生成AIの波に対しても積極的な姿勢で取り組んでおり、グループ全体でLLMを利用して生産性向上を図る方針を決定しました。そのための体制整備やツール、ルールの確立にも取り組んでいます。

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グループ全体でのGenerativeAI活用推進を強化/社員がChatGPTを適切かつ積極活用できる環境整備を進める

具体的には、業務にLLMを活用する際のルールやセキュリティガイドラインを明確化し、それを遵守する範囲での利用を促進しています。また、セキュリティを保証しつつツールをより活用できるよう、社内チャットにChatGPTを用いたチャットボットを導入しました。

チーム内のチャットでは、チャットボットを呼び出して会話することも可能です。そのため、複数のメンバーで共同作業を行いながら、プロンプトをブラッシュアップするなどの活動も行えます。

この新たなツールは、各々が自分の業務の中で自律的に「このように使える」「こうすると便利だった」といった経験や発見を共有するためのプラットフォームとして機能しています。特に優れた利用法については、社内コミュニティで広く共有されることが多いです。

今後の展望としては、AIとの相性が良いフォーマットで利用方法を収集・分類し、それをコミュニティの暗黙知としてアクセス可能にする「コミュニティボット」の開発を企画しているところです。

今後の開発、エンジニアの仕事はどう変わる?

——今後のIT・開発分野において、生成AIはどのような影響を与えていくと考えていますか?

生成AIのプログラミング言語能力は卓越しています。その原因は、プログラミング言語が厳格な規則性を持つことにより、AIが生成するコードは評価しやすく、一貫性が保てるからです。

生成AIが自然言語からプログラム言語への翻訳を精緻に行えることで、プログラマーの「翻訳者」としての役割は次第に縮小します。これは、プログラム言語への変換をAIが無償で提供する時代においては、自然の流れともいえます。

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しかし機械翻訳が発展しようとも、原文の精妙な表現を再現するためには、クリエイティビティが必要です。機械翻訳がこれだけ発達してもなお、優れた翻訳家の仕事はなお尊重されています。

同様にエンジニアリングの世界では、プログラミング言語の理解と仕様への正確な表現だけではなく、システム全体の最適化、拡張性の確保、データ構造とアルゴリズムの深い理解、そして潜在的なセキュリティリスクの管理など、包括的で創造的なタスクの価値が高まっています。

 

エンジニアに求められる知識は、このAI時代にも変わらないと思っています。それは、コンピュータの本質とその動作メカニズム、そして抽象的なシステムアーキテクチャを理解し、適切に活用する能力です。

何を学べば良いか?ということも変わりません。コンピュータサイエンスとプログラミングの基礎をしっかりと学ぶことが、今後も重要となるでしょう。しかも、その深度は増すため、より専門的な知識が求められると思います。

有難いことに、AIのサポートによりプログラミング作業が迅速に完了し、専門性を必要とするタスクや調査・研究への時間が確保されます。
これらの機会を活用し、自身の能力を向上させることが大切だと考えています。

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——最後に、大西さんが考える今後の展望を教えてください。

現在、企業の規模を問わず、多かれ少なかれLLMの自然言語処理能力とその適用範囲の広さを目の当たりにしています。
それぞれの経済活動におけるLLMの活用法や、市場の変化などについて、個々の視点から模索している状況です。

私たちの会社も、中古車業界やECなど特定の分野に特化したバーチカルなサービスと、SMSなどの広範囲に利用可能なホリゾンタルなサービスを、今後もITプロダクトとして開発し続ける予定です。
両方の視点から、言語処理が情報を精緻化したり整理したりする部分や、対話インターフェースとしての利用可能性は広大だと考えています。

我々は基礎研究を行っているわけではありません。
社会がより便利になるためにどのように技術を活用し、どのように組み合わせて問題を解決できるかを考える技術利用者として、スピード感を持ってこれからも事業開発に取り組み続けていきたいと思っています。

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

編集:小島 沙也子

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