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ハッカーの共通点はジョジョが好き?「ブリコラージュ」を仮説に考えてみた

自身の技術を最新に保つために大切なことは、先端の技術者とお会いして話すことです。僕もこれまでたくさんのハッカーとお会いして毎度エキサイティングな話を聞かせていただいています。その中で、「ハッカー気質」というか、彼らに共通の似た雰囲気があることを見つけ、これは何なのか?と考える様になりました。

その共通点の一つに荒木飛呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」ファンである。というのがあります。ジョジョのファンということで年齢層は主に30〜50代に限られてしまいますが、日本のハッカーのほとんどは悉くジョジョ好きなのです。これはなぜか。度々考えていますが、現在はブリコルールへの共感。という仮説に辿り着いています。

あるハッカーにジョジョについて尋ねると、彼は「性質で戦うのが良い。それはハッキングそのものだ」とその魅力を説明してくれました。ジョジョも他の少年漫画と同じ様に「ジャンプ」で連載されたバトル漫画ですが、戦いのベクトルが他の漫画と異なるというのです。「如何に困難を超えるか」というのが物語の醍醐味ですが、一般的なバトル漫画が「数量アップ」で超えていくところをジョジョは「質の変化」で超えていくのです。なるほど。

エンジニアリングは複雑な問題をいかに「数量・数値」の問題に変えて、コントロールしていくかということが基本コンセプトとしてあると思います。映画「バクマン。」にある様に少年漫画で、その漫画の良し悪しは、ユーザーからのアンケートハガキの反響(面白いと言われた得票数)によって判断されるということで、これも雑誌の売れ行きをどの様に上げていくか?というエンジニアリング寄りの考え方ですね。

「エンジニアリング」の対立概念として「ブリコラージュ」というのがあります。エンジニアリングが、解くべき課題を分解し一つ一つを丹念に組み上げてそれを解決していくのに対してブリコラージュは場当たり的に、今その時に必要な課題を、持ち合わせの技術で解決していく様なアプローチです。ブリコラージュ使いのことを「ブリコルール」と言いますが、ジョジョの登場人物達は(主人公だけでなく、敵についても)、要所でこのブリコルールの性質を見せてきます。ジョジョでは特に2部の「ジョセフジョースター」が優れたブリコルールでした。また作者の荒木飛呂彦先生がジョジョ以前に書いていた漫画に「魔少年ビーティー」がありますが、この主人公「BT」はまさにブリコルールそのものでした。

少年誌に連載を持つとことは、漫画家にとって、締め切りとの戦いです。毎週の締め切りのプレッシャーの中で、物語を進めていくためには、漫画家自身がブリコルールである必要もあるでしょう。荒木飛呂彦先生自身がブリコルールであって、ブリコラージュに対する面白みというのを感じているのかもしれません。

ちょっと出典を忘れてしまいましたが、ブリコラージュを理解するために次のようなエピソードを読んだことがあります。この話に面白みを感じる方はブリコルールの素養があるのかもしれませんね。

ある企業が海外(南の島)に工場を作り、そこでチューブ歯磨き粉を製造していました。その製造行程の最後に、歯磨き粉がきちんと充填されていない製品を取り除くという工程がありました。そこでは現地採用のスタッフが、ベルトコンベアで流れてくる製品の箱を持ち上げては重さを確かめ、重い軽いの感覚で空箱を取り除いていたのです。そしてある日、生産性の向上のため、この工程の機械化が検討されることになりました。

エンジニアが工場を訪れ、課題を把握した後、この問題を解決するために、不良品発見の機械を開発します。それは重量のセンサによって製品の重さを測定し、重量の足りない箱を見つけるとベルトコンベアを止めて、ブザーを鳴らすというものです。この機械の導入が始まり、不良品はほぼ完璧に排除できる様になりました。しかし、不良品が発見されるごとにコンベアが止められてしまうため、その度にスタッフが不良品回収&リセットを行う必要があり、現地スタッフの評判は芳しくありませんでした。

ある日、工場長がラインを見回っていると、なんとこの不良品排除の機械が止められているではありませんか。代わりに、どこから調達したのか扇風機がベルトコンベアに向けられており、向こう側にはゴミ箱がセットされています。見ているとコンベアを流れてくる製品の中で、正しく充填されていない空箱は、扇風機の風に吹き飛ばされ、ゴミ箱にストンと落とされているのでした。

この記事を書いた人

大西 秀典
プロダクト開発本部 IT戦略統括部長兼CDO
大西 秀典

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