1. HOME
  2. テックブログ
  3. 自作キーボードマスターへの道 ~基礎知識編~

自作キーボードマスターへの道 ~基礎知識編~

皆さんはキーボードへのこだわりはありますか?

プログラマーとして業務をさせていただいていると、1日に6時間ほどキーボードを触っている時間があります。 僕は趣味で休日にもプログラミングをするので、平日と同じくらいキーボードを触っています。 そう考えると、このままいけば人生の大半の時間をキーボードと共に過ごすことになると思い始めました。 これはキーボードにこだわりを持たないわけにはいきませんよね?

いろいろな種類のキーボードを買い漁り、研究し続けた末、 自作キーボードに出会い、その面白さと奥深さにどっぷりハマってしまいました。いわゆる「沼に落ちた」ってやつですね。 

日本のソフトウェア工学の先駆者である東京大学の和田英一名誉教授はキーボードに付いてこのように言及しています。

「アメリカ西部のカウボーイたちは、馬が死ぬと馬はそこに残していくが、どんなに砂漠を歩こうとも、鞍は自分で担いで往く。馬は消耗品であり、鞍は自分の体に馴染んだインタフェースだからだ。
いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない。」

とても大好きな言葉です。この言葉の中にある「生涯使えるインターフェイス」を自分で作り上げることが僕の現在の目標であり、この奥深く、面白い世界を是非皆さんにも体験して欲しいと思いテックブログに書くことにしました!

というわけで、今回は自作キーボードについての基礎知識編として、キーボードにはどんな種類があってどんなものを自作することができるのかについて紹介させていただこうと思います。

自作キーボードとは

自作キーボードとは、 その名の通り、普段使うキーボードを自分で作ってしまおうというもので、 誰かが作成・販売してくれている自作キットを組み立てるものから、基盤の設計からケースの制作まで自分でやってしまうなど非常に幅の広い楽しみ方があります。 エンジニア業界では2年前あたりから注目を集めはじめ、現在では秋葉原に自作キーボードの専門店が日本初のオープンするほどに人気アイテムとなりました。

最近では3Dプリンターや樹脂粘土、UVレジンなどを使って自分だけのでキートップ(キーボードのボタン部分)まで自作する人もよく見かけるようになりました。

キーボードの種類

自作キーボードと言ってもまだまだ新しい技術のため、まだすべてのタイプのキーボードが自作できるわけではありません。 主なキーボードのタイプと、自作キーボードで手軽に作ることのできるキーボードはどんなものかを説明していこうと思います。

スイッチ

キーボードの種類は主に内部のスイッチの種類によって決まります。
スイッチとは、キーを押す/離す動きによって基盤に信号を送る/止めるを制御するパーツです。 このスイッチの種類によって、キーの押しやすさと耐久力が決まる、まさにキーボードの要と言っても過言ではないパーツです。 スイッチは実にいろんな種類がありますが、今回は市販品で売り出されているもので有名なものを紹介します。

メンブレン

キーとスイッチ部分がゴムパーツで支えられているキーボードで、安価に作成できるため家電量販店などで販売されているのは基本的にこちらのメンブレン方式です。 スイッチを支えている部分がゴムパーツだけであるため、劣化によってキーが反応しなくなるなどの不具合が起こりやすく、寿命は大体2から3年ほど。 キーを押下するのに少し力がいるため長時間の使用にはあまり向きません。 また、部分的な修理が出来ないため、キーが一つ壊れたらキーボード自体を買い換える必要が出てしまうのもデメリットの一つですね。

静電容量無接点方式

写真のキーボードは僕が職場のメイン機として使用している静電容量無接点方式の名機「HHKB(HappyHackingKeyboard)」ですがこちらがなんと3万円します…(笑)

静電容量無接点方式は、スイッチの電極が基盤に触れる事なく一定のレベルに近づくとキー入力を認識してくれる方式のキーボードです。接点がない分、耐久性が非常に高いことに加え、 打鍵に必要な力が低くキーに30g~45gほどの力を加えるだけで反応してくれます。

また、スイッチの電極が基盤に触れないため、スイッチの劣化によりキーを一度押したはずなのに二度入力されてしまうチャタリングと呼ばれる不具合が理論上発生しないという非常に信頼性のある方式で、その信頼性の高さから、証券取引所や銀行など正確なキー入力必要になる現場でも採用されるプロ仕様のもので、寿命は4~8年、メンテナンスを怠らなければ更に長く使用することも出来ます。

 プログラマーの間でも使用者が非常に多いタイプのキーボードで、僕も職場ではこちらの方式のキーボードを使用しています。 デメリットは非常に値段が高いことですね…。 

ですが、静電容量無接点の特有の優しいキータッチと安定した文字入力は、入力ミスなどのストレスを激減させるだけでなく、キーボードを使う楽しさを教えてくれる非常に素晴らしい逸品だと思っています!

メカニカル


僕の職場のサブ機として活躍している、MiSTELのBAROCCOです。

メカニカルは一つ一つのスイッチが独立しているのが特徴的なスイッチ方式です。 耐久性も高く約5000万回~1億回のタッチに耐えうるほどの耐久性と安定性を持つため、プロの現場だけでなくゲーミングデバイスなどハードな使用をされる現場でも採用される信頼性のある方式です。 また、スイッチ一つ一つが独立しているため、キーの一部が壊れても壊れた部分のキーを交換して使用することができます。 デメリットとしては商品によっては音が大きいものがあり、ものによっては職場で使用すると怒られる可能性があるくらいでしょうか(笑) 

写真で紹介させていただいているのは僕の職場のサブ機として活躍している、MiSTELのBAROCCOです。
Cherry MXスイッチというメジャーなメカニカルスイッチを採用していて非常に軽いキータッチと軽快な音で楽しませてくれます。

前途した通りスイッチが独立しているため、このように左右に分割した変わり種キーボードも作成できるのも大きな特徴です、これは見た目的なインパクトだけでなく、手の位置が左右に広くなる分、肩を開くことができるため、肩こりなどを劇的に減らすことができるというメリットがあります!

自作キーボードで主流なのはメカニカル方式

他にもいろいろな方式のスイッチが存在しますが、主流となっているのは上記3タイプのスイッチ方式で、中でも最も自作キーボードに使用されているのはメカニカル方式です。メカニカル方式は非常に多くの種類が存在し、 スイッチ自体の反応荷重からスイッチ押下時する音の大きさまで設定できることや、スイッチ一つ一つが独立しているため、基盤を設計する際の自由度の高さが自作キーボードに上手くマッチしているのが大きいですね。

メーカーによってはスイッチの軸の色でキー部分の重さなどがわかるようになっているものもあります。

自作キーボードに必要なものは?

知識面

キットを組み立てる程度であれば、半田ごてが一通り触ることができれば良いのと基本的な電子工学の知識が少しあれば問題ありません。 いずれもキットを組み立てていくうちに覚えることも出来ます。 ですが、ゼロから自分だけのキーボードを作る場合は、基盤の設計知識や電子工学知識など少し高度な知識を覚える必要があるので注意です。

道具面

半田ごてとドライバーなどの基本的な工具があればOKです。 キットによってはアクリル板を切ってケースなどを作る必要がありますが、その場合はcre8 BASEなどのクリエイトスペースなどで機材を借りるなどして対応してしまいましょう。

自作キーボードの楽しみ方

一発目から基盤の設計から全てやろうとすると非常に大変なので下記の順番でやっていくのが個人的におすすめです。 大体の予算も記載しておりますが、キットによってはその限りではありませんので、あくまで参考までに…。

初級編  入門キットで自作キーボードを体験!

キースイッチからケースに至るまで一つ買うだけで全部揃ってしまう親切なキットを出してくれている人がいるのでまずはそちらに挑戦して、自作キーボードがどんなものか体験してみましょう。

予算:10000円~15000円

 中級編  本格的な自作キットに挑戦!   

本格的な自作キットは基盤とネジなど小物類だけの場合がほとんどです。 ではケースなどのパーツはどうするのか、これもまた自作する必要があるのです!  

作成者からケースの設計書をダウンロードする事ができるので、自分でアクリル板などの材料を用意してクリエイティブスペースなどの材料が加工できる場所に持っていき、少しずつキーボードを組み立てていきます。手間は掛かる分、ケースなども好きな色や形に改良が出来たり、スイッチも自分の好きな物を選ぶ事ができるので、オリジナリティーのある自作キーボードを作ることができて達成感があリます! 

予算:10000円~15000円

上級編  ゼロから自作キーボード   

最後の上級編はゼロから完全オリジナルのキーボードを作ってみましょう!   
見た目はもちろんの事、内蔵する基盤の設計・発注まで自分で行う必要があるため非常に大変ですが、出来上がったときの達成感は格別です。

予算:8000円~

最後に

さて、今回は自作キーボードの基礎知識について紹介させていただきました、次回は実際にキットを使ってキーボードを自作するところをご紹介できればと思っています。

この記事を書いた人

福岡
プロダクト開発本部 開発チーム
福岡

おすすめの記事