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【夏休み企画】シルクスクリーンでロゴTシャツを作る

2019の暑かった夏も終わりですが、今回は夏休みの自由工作的ものづくりについてご紹介したいと思います。今回紹介するのは、比較的に身近な道具を使って、Tシャツにシルクスクリーンプリントを行う方法です。 

このブログ「Techブログ」と銘打っており、Techに関することを多めにご紹介するコンセプトになっていますが、今回ご紹介する様なデジタルツールを使ったものづくりは、パーソナルファブリケーションというTech領域のトピックになっています。 

人の文化は道具を作り・使うことで厳しい環境に適応していくことで発達してきました。インターネットの普及によって、私たちはものを製造するのに必要な設計情報を手に入れたり、共有することができます。 

しかしそれを実際に使えるフィジカルなものに転写する技術は、まだ一般個人に普及しているとは言えません。パーソナルファブリケーションはそのギャップを埋める技術トピック&ムーブメントといって良いと思います。 パーソナルファブリケーションというキーワードには、デジタルデータや転写機械(3Dプリンターやレーザーカッターや切削機)を利用するという前提が含まれていまして、今回はシルクスクリーンの版を作成する過程で、家庭用のレーザーカッターを利用します。(レーザーカッターはカッティングプロッターで代用したり、器用な方はご自身の手(マニュアル)でも可能です。)

制作の流れ

最初にざっくりと全体の流れを説明します。

1.シルクスクリーン枠を作成します。
2.デザイン原稿を作成しカッティングします。
3.カッティングの「地」の部分を枠に貼り、版を作ります。
4.Tシャツに転写します。

スクリーン枠の作成

百円ショップでフォトフレームなどを買ってきて、この枠の部分だけを使います。転写したいサイズが入り、木でできた枠ならなんでも良いです。レーザーカッターや切削機が使えるなら、MDFなどの素材から丁度良いサイズの枠を切り出すということでもOKです。

今回は100円ショップの大きめのフォトフレームを素材にしました。 スクリーン素材には、手芸店でポリエステルのオーガンジーを購入しました。この様な布は、手芸店では大体扱いがありまして1mで300〜500円ぐらいで買えます。

この布を先に用意したフレームより少し大きめにカットして、フレームにホッチキスでバチバチと固定します。このとき、布が均一にピンとテンションがかかった状態を作る必要がありますので、少しコツがいります。最初に枠の角にホチキスを止めて、対角に向けてテンションをかけながら引っ張り、止める。逆の対角線も同様に行い、それから上下左右の各辺の中点を同様に処理します。あとは良しなにやっても大丈夫です。 ピンと貼れたらこんな感じです。

枠の準備はここまで。デザインを作成して「版」に仕上げていきましょう。

版の作成

デザインを作成します。私はAffinityDesignerというMac用のグラフィックソフトを利用しています。PhotoShopなど自分の使いやすいものを利用すれば良いですが、デジタル加工機を使う場合は最終的にベクターデータ(SVGなど)にする必要がありますので、そのエクスポートに対応しているものが良いです。

今回はMONADEというロゴをデザインしました。 デザインが完成したら、左右反転し、SVGなどカッティング機械の対応している形式に書き出します。このデータでカッティングを作成します。レーザーカッターで処理する場合、カッティングシートの色は黒にしておくのが良いです。シートの樹脂部分は熱ですぐ切れるのに対し、台紙は白紙でレーザーを反射する(レーザに強い)ので、適切に強度を調整することで綺麗にカッティングできます。(塩ビが含まれているシートをレーザーでカッティングする場合は、換気や使用後のメンテに注意が必要です。カッティング時に有毒ガスが発生して吸うと体に悪く、機械の金属部分も腐食しやすくなります。) 

カッティングが完了したら、ロゴ部分(図と地の図)を剥がします。(今回カットの「図」にあたる部分は利用しません。ただこちらもちゃんとアプリケーションシートに移しておけば、反転ロゴなので車のガラスなどへの転写が可能です。) 

ここで「地」の全体に薄く油などを塗っておきます。この後「地」をスクリーンに移しますが、シールと布の粘着力よりもアプリケーションシートの粘着力が強いと作業が難航しますので、事前にその粘着力を弱めるためのポイントです。用意する油はおそらく油であれば何でも良く、私は機械油を使います。一度コットンなどに染み込ませて、全体に塗布します。 「地」の全体をアプリケーションシートに取りました。

これを今度はスクリーンに移します。スキージーなどを使ってしっかり貼り付けていきます。無事転写ができたら、今貼ったデザイン部分の周囲をプラスチックテープでしっかり固定しておきます。これによって「地」の周囲をマスキングすると共に、版自体の強度がアップして扱いやすくなります。この時プラスチックテープは梱包用によくある透明のものが良いです。印刷をする際に位置合わせがしやすくなりますので。

印刷

まずシワなどが入っていると邪魔なので、準備としてTシャツのプリントしたい部分にアイロンをあてておきましょう。プリントはできるだけ平らで硬い机の上で行います。事務机などが良いでしょう。また、今後も複数枚印刷をするのであれば、Tシャツの中に入れる下敷きを作っておくのも便利です。

次はMDFを加工して作った下敷きの例です。

下敷きにガイドを書いておけば位置決めもやりやすくなります。ロゴの高さは大事です。1〜2cm変わればかなり印象が変わりますので自分の体格に合わせて良いポジションを選んでくださいね。 版の位置を決めたら、アクリルガッシュをデザイン部分の周囲に直接置いていきます。ちょっと多いかな…というぐらいで丁度良いです。

そして、スキージーでおよそ45度ぐらいの角度をつけてシュッと引きます。上下左右斜めと隈なくやっていくのが良いですね。印刷パターン部分に塗料を行き渡らせることができたら、そっと(しかし躊躇わずに)フレームを引き上げます。 この様に印刷できました。 

そして忘れてはいけないのが版のメンテナンスです。プリント後、速やかに版を水で洗浄してください。アクリルガッシュが乾くより先に洗わないと目詰まりして版が使えなくなります。 このプリント作業は若干練習が必要なので、心配な方は失敗して良い布で何度か試してみるのが良いと思います。

まとめ

さて、今回は比較的身近なものを使って、布にシルクスクリーン印刷をする方法を紹介しました。夏休みの工作的に、あまり深く考えずにこのテーマを選びました。しかし、ロゴTシャツという題材は、デジタルのものを最終的にシルクスクリーンというアナログな手法で布に転写することになり、パーソナルファブリケーションを理解するのには程よい題材だったかもしれません。 日頃はデジタルなアウトプットに偏りがちですが、実際に手を動かしてやってみると様々な発見があって面白いですよ。ぜひトライしてみてください。

この記事を書いた人

大西 秀典
プロダクト開発本部 IT戦略統括部長兼CDO
大西 秀典

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