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「入り口」のデジマ教えます。探されるコンテンツのデザインについて

デジタルマーケティングには入り口から出口まで色々な技術がありますが、この中で特にコンシューマー向けのメディア運営では、入り口部分の技術が重要です。それは自分たちが運営するサイトをインターネット上でどの様に見つけてもらって、来訪してもらうかということです。初めてのサイトを見つける時には、Googleの検索を使うか、SNSで流れてきた面白い記事を踏むかのいずれかによるものが多いのではないでしょうか?現在、マーケティングにおける入り口戦略では、検索やSNSなどのプラットフォーム上でいかに情報を広げ、また見つけてもらうか?ということにほとんどが掛かっています。

その中でも特に比重が高いのが、検索エンジンからの自然流入です。これは何かの情報を探している人はインターネットで検索を使うことが多く、またビジネスサイドは検索エンジンから流入してもらうことで、まさにそこにある情報を探している人に対して、その商品やサービスを紹介することになるため、互いにマッチングが良く成果が出やすいからです。ただし、あらゆる分野には競合がいますから、自社の製品やサービスがどれだけ優れていてユーザニーズとマッチしているものであっても、そこには競合との戦いがあります。さて、この戦いを私たちはどの様にやっているのか?そのコンセプト&種明かしを少しだけ紹介したいと思います。

自然検索でよりたくさんのキーワードで探されやすくして、サイトに訪れる人を増やすという施策はSEOと呼ばれています。ここでは、このSEOに限定して「入り口」のデジタルマーケティングを考えてみましょう。SEOは検索エンジンが発明されてすぐインターネットの黎明期から存在する概念です。その手法についても、古くからその時の検索プラットフォーマーの動向に応じて様々なものが試みられてきました。現在、日本では検索エンジンは実質Googleのみになっていますので、今の日本でSEOについて考えるならGoogleに集中して考えれば大丈夫です。(YahooもGoogle製の検索エンジンを採用しているため。)

SEOを考える時、私たちがGoogleの動向で注目しているのは「エージェント志向」です。Googleは検索エンジンから始まった会社ですが、検索エンジンというサービスの延長にある「エージェント」(ざっくりとは、人間と対話しながら問題を解決するボット)としての役割を強めていっています。エージェントは、AmazonもMicrosoftもAppleもそれぞれスマートスピーカーなどのプロダクトや、OSに付随のサポート機能などで実現を進めているところです。これは、コンピューターテクノロジーが向かう当然の方向なので、Googleの動向だけを殊更に強調する必要はありません。しかし、今や生活の中にネットの情報が深く食い込んでいるため、ユーザとネットの最初の接点であるGoogleの動向によって、今度はユーザーの行動が変わるというフィードバックがあり、マーケティングはそのフィードバックも含めた系を捉える必要があるため、ネットでの集客を考える上では重要な視点となると考えています。

私たちは「良いコンテンツプロバイダーとしてエージェントしてのGoogleを支える」というコンセプトでコンテンツマーケティング(コンテンツを配信することによって集客する)を行ないます。そのためにはユーザにとって有益な情報をアウトプットし、それがまたエージェントにもその先のユーザにもより正しくわかりやすく伝わる様に表現を磨いていく必要があります。すでにある商品やサービスであれば、それを必要としている人がどの様なコンテンツを欲しているか?ということであり、新しく作るものでは「この様なコンテンツを消費してほしい」為にサービスを開発するということもあります。

私たちは、提供するコンテンツを判断するフレームワークとして次のものを考えました。

つまり端的には、相手が欲していて自分がアウトプットできるものの中で、ネットで伝わるものを出しましょうということです。これは言ってしまえば当たり前のことなのでですが、実現するのは案外難しく、上記の様なフレームワークを設定して反省的に取り組んでいます。この取り組みのほとんどは「ことば」との格闘になります。

コンテンツ制作の初期段階では、専用のツールを使いユーザが過去に検索に利用した大量のキーワードを集計します。キーワードはユーザの意図(インテント)の表れですので、そこからインテントを推理し、抽出します。KJ法などカードを使った思考整理をやったことがある方は、大量のカードから意味のありそうなグループを作ることが、如何にクリエイティブな作業であるかがわかるでしょう。あるキーワードと別のキーワードに共通する意味を推理したり。あるいは、近い意味を持つのにそれが使われる意図は異なるものを判別したりしてグルーピングします。

例えばこれは「廃車」という言葉を含んだ検索を行ったユーザのキーワードを分類したものです。

ここから私たちは以下の様なインテントを抽出しました。

  • 廃車後、その車がどうなるのか?
  • 廃車はどこで手続きするのか?
  • 廃車に関わるトラブルは何があるか?またその解決法は?
  • 廃車ビジネスはどんなものがあるか、それは儲かるのか?
  • 廃車を移動する方法やかかる金額は?
  • 廃車に関わるセンチメンタルな情報を知りたい。
  • 廃車の手続きについて知りたい。
  • 廃車を修理して乗ることについて知りたい。
  • 地域の廃車手続きや店舗について知りたい。
  • 廃車とは何か?どの様な状態になると廃車か?
  • 廃車は買い取ってもらえるか?価格は?
  • 廃車にかかる費用はいくらか?内訳は?
  • 廃車にする車が欲しい。買いたい。

インテントには「幅」がありますので、その幅に応じた程よいサイズの回答を用意します。つまりあるキーワードで検索されるとき、そのインテントと関連がありそうな別のキーワード(共起語)を、一緒にそのコンテンツに含めるかどうか?ということを非常に良く考えます。私たちが良いコンテンツプロバイダーであるためには、このインテントに対するコンテンツの「幅感覚」というのが超重要なのです。

上でGoogleのエージェント志向に寄り添うというコンセプトを紹介しました。検索エンジンは「ユーザが望むものが含まれているもの」を応答するものですが、エージェントには「ユーザが望むそのもの」を返すことが期待されます。そのためGoogleはユーザの入力するキーワード以外にも、ユーザの置かれている状況を事前によく知っておき、文脈を読んで応答を作成する様になります。その時応答されるコンテンツに重要視されるのは、インテントを満たしていて、かつ大きすぎることはないか?ということです。そのため、良いコンテンツに重要なのは、インテントに対するサイズ感です。

Googleの技術はまだ文脈を読んで動作するところまでは到達していない様です。しかし、それに必要なインフラや基盤技術(スマートフォンなどのパーソナルデバイスの普及、機械学習によるパターン認識技術の発達)は整っていますので、近い将来にはその様なことが可能になるでしょう。情報の提供側もプログラマティックにコンテンツを生成する様な技術で対抗しそうですが、情報の生成には是態(生成した候補のなかから一番良いものを選ぶ方法が無い)の問題があります。まだしばらくはここで紹介した様な「ことば」との格闘が続きそうです。

この記事を書いた人

大西 秀典
プロダクト開発本部 IT戦略統括部長兼CDO
大西 秀典

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