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情報リソースとしてAIを活用する上で必要なマインドの転換

こんにちは、プロダクト開発本部 企画チームの木谷です。

近年、ChatGPTをはじめとする生成系AIの登場により、私たちの業務環境は大きく変化しています。このようなツールの可能性に期待する一方で、「どう活用すれば良いのか分からない」「AIを使いこなせる人とそうでない人の差が広がっている」といった声もよく耳にします。

本記事では、AI時代を生きる上で必要な「マインドの転換」に焦点を当て、AIの特性と限界を踏まえつつ、AIを情報ソースとして活用する上で効果的な活用を行うための考え方について記載しています。

生成系AIの特性を理解する

まず、生成系AIの特性についての整理です。

AIの回答は一般論に寄りがち

生成系AIはバイアス(偏り)のある回答をしないよう学習されているため、その回答は「平均的」または「汎用的」になりやすい傾向があります。そのため専門性の高い分野や独自の見解が必要な場合は、追加の情報や指示が必要となります。

回答が冗長になりやすい

これは一概には言えませんが、利用するモデルにより、AIは必要以上に情報を盛り込んで回答する傾向があります。(例えばChatGPT o1モデルなど)もし要点を絞り簡潔に回答を得たい場合は、問いかけ方(プロンプト)を工夫する必要があります。

AIに依存しすぎる危険性

AIの情報を鵜呑みにしてしまうと、誤情報や偏った見解に基づく意思決定を行ってしまうリスクが高まります。
これにはLLMの特性である「ハルシネーション」が関係します。
「ハルシネーション」とは、AIがあたかも事実のように正しくない情報を発信することです。俗に”AIが嘘をつく”と言われる現象です。
以下添付画像は実際にハルシネ―ションを起こしている例です。
宮崎駿監督のアカデミー賞受賞は実際には2作品のみですが、ノミネート作品も受賞扱いとなってしまっています。

「ハルシネ―ション」は(先に記載した話と若干矛盾しているように見えますが)、独自の見解を得ようと、細かく指示を行った際などによく見られます。
もし、「ハルシネーションが起こる」という認識がなく、AIを信じ切っていると誤った情報を正確なものとして捉えてしまうリスクがあります。
そのため、複数の情報ソースを活用してバランスを取ることが重要です。

「AIを使いこなす側」になるための考え方

次にAIを効果的に活用するための考え方についてです。
個人的にですが、以下のような考え方が重要であると考えています。

1. AIはあくまでツールの一つ

AIを「万能の存在」と過信せず、有力な情報ソースの一つとして位置づけましょう。状況に応じて、専門家への相談や他の情報源との併用が必要です。

2. 目的を明確にし、言語化する力が重要

何を達成したいのか、どんな課題を解決したいのかを明確に言語化できることが、AIを効果的に活用する第一歩となります。曖昧な指示では、期待通りの結果を得ることは難しいでしょう。

3. タスクを分解する力が鍵

複雑な課題を小さな処理単位に分解し、順序立てて考えられる人ほど、AIから質の高いサポートを引き出せます。この「タスク分解力」は、AI時代に価値が高まるスキルの一つです。

AIは便利なツールであるものの、結局は利用する本人の意思や能力に依存して出力が変わると思っています。

そのため、AIはあくまでも便利な補助ととらえ自身の思考の言語化やタスク分解などベーシックなスキルを鍛えていくことで業務効率やAIを上手く活用することに繋がると考えています。

AI活用の具体的なステップ

ここまではマインドの話でしたが、ここからは実際にAIを活用する際の具体的なステップを見ていきましょう。
記載している内容の一部はOpenAIの提唱しているプロンプトエンジニアリングガイドにもまとめられていますので、合わせて参照すると望んだ出力が得られると思います。

1. 目的・課題を言葉で表現する

まずは取り組むべき課題を言葉にしてみましょう。
この際、明瞭簡潔になっていなくても構いません。
まずは自分の頭の中にある、達成したい課題や果たしたい目的を言葉にしてアウトプットすることでAIに達成したい目的について伝えることができます。

2. タスクやステップごとに分割する

次のステップでは1で表現した言葉を小さなステップに分けます。
目的や課題を伝えるだけでもある程度望んでいるアウトプットを得ることはできるのですが、より精度を上げるためにステップ分けを行うとよりよいでしょう。
ここでいうステップ分けとは、プログラムであれば想定している処理の流れを記載したり、資料などであればターゲットや特に強調したいポイントなどを指します。
例:「ターゲットは誰か」「どのようなデザインが適切か」「具体的なアピールポイントは何か」

3. AIに問いかける(プロンプトの工夫)

次に分割したステップに基づいて、具体的な質問をAIに投げかけます。
これはAIが自分の出した指示を意図通りに理解できているかの確認のために行います。
回答内容により、次のステップで再修正指示を行ったりしながら精度を高めていきます。
例:「B2B向けのSaaS提案資料のサンプル例を教えて」→「具体的に何ページ構成で作るべきか」

4. AIからの回答を精査し、再指示を行う

Iの提案に対して追加の要望を出し、より良い成果物に仕上げていきます。  
回答内容を確認し、再度指示を出すなどトライ&エラーでのチューニングはOpenAIのプロンプトエンジニアリングガイドにも記載されています。
あくまでもAIは自身のアイデアを効率的かつ短時間で実現するための道具であり、完璧なアウトプットが瞬時に出てくる魔法のアイテムではありません。
そのため、トライ&エラーの過程で自身望む形にチューニングする必要があります。

例:「もう少しシンプルにして」「このポイントをより強調して」

5. 最終的なアウトプットの検証と統合

最後に他のソース(社内資料や他社事例など)と照らし合わせて、AIの回答内容を補強します。必要に応じて専門家や有識者にレビューを依頼するのもいいと思います。

注意点とリスク管理

ここまではAIの利点や利用方法について話してきましたが、利用にはリスクも伴います。
とても便利な反面、AIの参照している情報ソースが古かったり、法制度も含めた様々な整備がされていないことから社内規程や法律に抵触する可能性があるため最低限以下のリスクを理解・考慮した上で利用するようにしましょう。

情報の正確性とアップデート

AIの回答が常に最新情報とは限りません。
学習データが古かったり、ハルシネーションにより回答に誤情報が含まれる可能性があるため、重要な情報は必ず検証しましょう。
よく利用されるChatGPTでも、cutoffによりある特定時期までしか学習データに含まれておらず最新の情報を聞いても回答がうまく返ってこないということがあります。
そのため、ニュース性の高い情報や最新技術について知りたい場合は別リソースを用いる方が正確な情報が得られるかもしれません。

機密情報の取り扱い

外部のAIサービスに企業情報や個人情報を入力する場合は、社内のガイドラインや各サービスの利用規約を確認することが重要です。
海外事例ですが、韓国企業のサムスン社内でエンジニアがソースコードをAIツールに入力、機密情報であるソースコードが外部に流出するという事件もありました。
プランにより入力データを学習には利用しない、としているサービスもありますが入力する情報の取り扱いには充分注意する必要があるでしょう。

著作権やライセンス

生成系AIが出力したテキストや画像の扱い方については、社内ルールや法的観点を把握しておきましょう。
大きい事件では日本国内ではある制作会社が海外企業を相手取り、自社キャラクターデザインの無断利用を理由に著作権侵害で訴訟を起こした、ということもあります。
近年はChatGPTでも高精度で画像の生成ができるようになり、従来と比較し、生成AIを用いたクリエイティブの作成が簡単になりました。
イラストの生成や文章の生成が容易になった一方で、使い手もそれに合わせたリテラシーの向上を意識する必要があるでしょう。

まとめ

AI活用の前提となるのは「マインドの転換」であり、AIを神格化せず、あくまで有力な情報ソースの一つと捉え、他の方法とも併用する考え方が必要だと考えています。
マインドの転換が出来れば、例えばITに明るくないベテラン世代・中堅世代も、自分の経験や業務知識を活かしてAIと協働することで大きな成果を期待できます。

今回の記事では「情報ソースとしてのAI活用」をテーマにしていますが、それ以外に自身の業務タスクの中にAIを組み込み活用することもあるでしょう。
業務内で活用する場合は世に情報が落ちていないケースも多いため、AIが参照する情報を事前に自身でまとめたり、より具体的な指示出しや出力結果の精査を行う必要があります。
このようなケースでは、先に書いた通り自身の業務や働いている業界に詳しい中堅世代以上の方が、若手よりも効率的にAI活用をすることができるのではないか、と思っています。

ただ個人的にはですが、AIから出力された内容はあくまでもたたき台であり、本当の個人の価値創出はその先にあると思っています。
そのため「AIに使われる側」ではなく「AIを使いこなす側」になるために、自ら学習し、主体的に思考を言語化し、必要に応じてタスクを細分化したうえでAIに任せる部分を切り分ける、そんな姿勢が大きく求められていくと感じています。

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この記事を書いた人

木谷 砂知
プロダクト開発本部 企画チーム
木谷 砂知

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